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11話 一閃の戦果、霧の中に散る三頭の巨狼

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-12-25 11:46:31

 剣を構えると、二頭のオオカミが地を這うような低い唸り声を上げ、牙を剥いて同時に襲いかかってきた。ユウヤは冷徹なまでに冷静な動作で、バリアを纏わせた剣を一閃、薙ぎ払うように振るった。

 空気を切り裂く鋭い音と共に、勢い余って三頭の首が空中に舞い、鮮血が霧の中にどす黒い花を咲かせる。仲間が一瞬で屠られた光景を目の当たりにし、残りの三頭は本能的な恐怖に駆られたのか、じりじりと後退を始めた。

「逃がすと面倒だしな」

 ユウヤは逃走を許さず、足元の地面を蹴った。縮地に近い速度で肉薄し、バリアを刃として振るう。抵抗する間もなく、残りの三頭もまた、その首を地面に落とした。

「うぅ~ん……見た目だけで手応えナシか」

 ユウヤは剣を軽く振り、付着した血を払った。期待外れだったことに、少しだけ肩透かしを食ったような気分だ。

「えっと……魔石あるのか? これだけデカかったらあるだろ」

 試しに『収納』の機能を使って回収を試みると、手のひらに収まりきらないほどの巨大な魔石が六個、ぼうっとした輝きを放ちながら現れた。

「で……このワンコ達は片付けなきゃいけないのか? 面倒じゃない……? 一応……収納に入れておくかな」

 死体を放置して腐敗させるのも寝覚めが悪いため、ユウヤは巨大なオオカミの死骸も手際よく収納へと放り込んだ。

 作業が終わろうとした、その時だった。

 風を切る鋭い音が響き、ユウヤの足元に一本の矢が突き刺さった。

「弓矢……? 人か? 盗賊?」

 ユウヤは瞬時に身を翻し、矢が飛んできた方向を鋭い眼差しで見据えた。モンスターが多発しているこんな危険な場所で、わざわざ人間が攻撃を仕掛けてくるだろうか。

「盗賊も知能が低下し過ぎてモンスターになっちゃって、共存し始めたのか? それとも頭が悪すぎて体内に魔石でも出てきちゃって、モンスターに進化したとか!? あはは……な訳ないか」

 ユウヤは自嘲気味に笑い飛ばしたが、周囲の霧がさらに濃くなり、その奥から複数の不気味な気配がじわじわと近づいてくるのを感じていた。それは、先ほどのオオカミたちとは明らかに異なる、知性と殺意を孕んだ気配だった。

「それにしても、気配を全く感じられないのは、この黒い霧のせいなのかな……?」

 ユウヤは、視界を遮るねっとりとした闇を忌々しげに睨んだ。弓矢が飛んできた方角へと視線を向けると、その違和感の正体がようやく判明した。

 霧の奥に潜んでいたのは、人形のゴブリンのような醜悪なモンスターだった。そいつは卑怯な笑みを浮かべながら、再び弓を引き絞っている。だが、放たれた矢がユウヤの展開したバリアに接触した瞬間、甲高い金属音を立てて無残に弾け飛んだ。

 ゴブリンは「ギギッ!?」と慌てふためき、ヤケクソ気味に次々と矢を放ってくる。だが、いくら連続で放とうが、どれほど力を込めて放とうが、ユウヤの絶対的な守りを突破できるはずもなかった。

「……目障りだね」

 ユウヤが低く呟くと同時に、見える範囲にいたゴブリンたちの周囲にバリアを発生させ、その刃で一気に首を刈り取った。

 ドサドサッ、という重苦しい音と共に、三十体ほどのゴブリンが木の上から地面へと転げ落ちる。すると、それを見た同程度の数の群れが、猿のような身軽さで木から木へと飛び移り、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

「逃がさないよ」

 ユウヤは影のようにその後を追った。険しい森を駆け抜け、やがて少し開けた場所へと出た瞬間、待ち構えていた五、六十体ものゴブリンが一斉に姿を現した。

 彼らは一斉に弓を引き絞り、空を覆い尽くすほどの矢の雨を降らせてくる。しかし、ユウヤは足を止めることさえしなかった。

 瞬きをする間だった。放たれた矢がユウヤに届くより早く、全てのゴブリンの首筋をバリアの刃が冷酷に通り過ぎた。

 静寂が訪れる。先ほどまで殺意に満ちていた広場には、物言わぬ骸が転がっているだけだった。

「これで終わり、かな……? いや、まだ奥に何かいるな」

 ユウヤは血の匂いが混じり始めた霧のさらに奥、村へと続く道の先にある、一際巨大な負の気配に意識を向けた。

「うわぁ……こんなに、死体は要らないんだけど……魔石は、あるのかな?」

 ユウヤは、足元に転がる醜悪な骸の山を見下ろし、顔をしかめた。一応、討伐をしたモンスターから魔石の回収を試みると、手元には小粒ながらも不気味な光を放つ魔石が、90個近くも集まった。

「おおぉ。この場所からでも、回収はできるんだ? スゴイ、さすが女神様のスキルだな……」

 わざわざ死体を解体する手間もなく、念じるだけで魔力を秘めた魔石が手元に集まってくる。その利便性の高さに、ユウヤは改めて自分に授けられた女神さまの力の大きさを実感した。

 一休みしようと周りを見回すと、ちょうど腰を下ろすのに良さそうな、苔むした岩場を見つけた。ふう、と息を吐き、そこへ向かって一歩踏み出した、その時だった。体がフワッと浮いた様な感覚を感じた。

「ヤバっ! 罠か!?」

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